単純系と複雑系 為替市場の変動が特定できない理由
2018-01-26|FXのカラクリ(初心者向け)

雑なのかよ!? ( ノД`)
円高株安になると、経済評論家が次のような説明をすることがあります。
「円高が重しになって、日経平均株価が下落した」
「日経平均株価の下げを背景にドルが売られて、円高になった」
見事な責任の押し付け合いですね。
こんなアホな解説しかできないアナリストは、即刻クビにすればいいと思います。
この二つの解説は、どちらも正しくありません。
いや、ある意味どちらも正しくはあるけれど、原因→結果の一方通行で解釈するのは間違っています。
なぜなら、相場は複雑系であり、それぞれの要素が互いに干渉するからです。

複雑系とは、相互に関連する複数の要因が合わさって成り立つ状態のこと。
複数の要素が絡むために予測が困難でありながら、全体としては秩序だったな形を作ることが多い。
気象現象も生物の身体も、人間社会も為替相場も、複雑系に属します。
<複雑系の特徴>
・境界の決定は困難
・開いた系になりうる
・複雑系の要素が複雑系であることもある
・記録を持つことがある
・創発現象が発動しやすい
・フィードバックが行われる
・非線型であることが多い
言葉だけで理解できない場合は、自分の身の回りを確認してみてください。
貴方は日本という複雑系の要素であり、会社という複雑系の要素でもあり、家庭という複雑系の要素でもあります。
日本には国境がありますが、グローバル社会では他国の影響が大きく、輸出入がないと成り立ちません。
国民は個々に動いているように見えても、互いに協力と牽制を繰り返しています。
誰かが新技術を発明すれば多くの人が乗っかって、個人では不可能な大きなことを成し遂げます。
人々は歴史から多くのことを学び、文明を発展させ続けます。
外部から影響を受け、複数の要素がフィードバックを繰り返し、記録を持ち、非線形で進歩していく。
予想しがたいがランダムというわけではなく、複数の要素を織り込んで社会という一つの秩序を作り出す。
これはまさに複雑系の典型と言えますね。
もちろん、為替相場や株式相場も複雑系です。
個人がロングしたら、ストップ狩りを狙ったファンドが大口のショート仕掛けてくるかもしれません。
それだけな簡単ですが、実際は下がった個人がナンピンするかもしれないし、それを見たファンドがさらに売り増すかもしれません。
互いが互いのアクションに反応し、しかも当事者が複数いるため、どこに着地するのかは断定できません。
全体としての方向性を短期的に予想することはできますが、確定することは不可能です。
この不確定性が、我々投資家の悩みの種ですね。
複雑すぎる世界はトレーダーを苦しませ、時に凶行に走らせます。

このように相場は無数の要素がフィードバックを繰り返す複雑系なのですが、多く経済評論家は誤った論理を展開し、人々はそれを鵜呑みにしています。
サイコロゲームのような単純系で世界が成り立っているという、幼稚な誤解が蔓延しているのです。
<サイコロ(単純系)>
・個々の出目は干渉しない
・均等に出目が分布する
・履歴効果がなく、過去の出目と今の出目が無関係
・外部からの干渉を受けない

<為替相場(複雑系)>」
・個々の要素が干渉し合う
・結果は偏りが生じる
・参加者が過去の値動きを学習し、アクションを修正する
・外的要因に左右される
そもそも、人間はとにかく「原因と結果」を求めてしまう生き物です。
日常のあらゆる出来事に対して、常に納得のできる理由を探し求めています。
「理由がない」とか「無数にある」とか言うと、途端に怒り出します。
・最近太った→チョコを食べ過ぎたからだ!
・会社の業績が悪い→円高で車が売れないからだ!
・投資で損失が出た→エセ賢者なんて馬鹿の言う通りにしたからだ!
・韓国経済が不調→日本人が慰安婦問題で誠意のある対応をしないからだ!
・テキサスで竜巻が起きた→ブラジルで蝶が羽ばたいたからだ!
それは一本の線としてだけ見れば正しいかもしれないけれど、複雑系のほんの一部を切り取った乱暴な見方でもあります。
実際はいくらでも原因なんてあるし、結果が翻って原因になっていることもあります。
複雑系における事象は、単独の要素だけで説明できないのです。
「原因と結果」、「加害者と被害者」、「親と子」、「起承転結」というように、人間は簡潔で一直線な事象を好みます。
しかしながら、複雑系である現実においては、何でも明確に区切ることはできません。
難しい話で頭が痛くなるかもしれませんが、総体として捉えることを心掛けてください。

次回は、複雑系であるが故に相場がどのように歪んでいるのか、
複雑系である市場に対して投資家はどう対応するべきなのか、
について解説したいと思います。
⇒FXトレードにおける優位性は正規分布を超えた先にある