FXトレードにおける優位性は正規分布を超えた先にある

考えるのを止めないで! ( ノД`)
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⇒単純系と複雑系 為替市場の変動が特定できない理由
において、相場は複雑系であり、総体として歪みを持つことを述べました。
今回は相場の歪みの具体的な内容と、それ故に生じる優位性について説明します。
いきなり歪んだ状態を解説しても、正常な状態がわからなければ理解するのは困難です。
そのため、我々が日常的に使っている統計(正規分布)から考えてみましょう。
例えば、身長とか体重とか、ソフトボールを投げた時の飛距離とか、学校で測定する数値がイメージしやすいでしょうか。
17歳の日本人男性の平均身長は、だいたい170cm。
もちろん165cmの人も175cmの人もいますが、平均値も中央値も約170cmです。
170cmの人数に比べると、165cmや175cmの人数は少ない。
160cmや180cmの人は、もっと少ない。
140cmや200cmの人に至っては、ほとんどいないはず。
身長と人数の関係をグラフに表すと、概ね以下のような正規分布になります。

ただし、これは身長が人為的にいじりにくい要素というのが大きい。
体重のように本人の意志や社会環境で左右される場合は、少々ずれる可能性があります。
データを取る母体によっては左右に偏ったり、二山になったりすることもあります。
自然界における独立した事象は、このような確率分布を示すことが多い。
中央から離れるほど頻度が下がるので、確率としては低くなります。
頻度は中心からの距離に応じて線形に変化していきますが、敢えて三つに分けると以下のようになります。
①小規模な変化(0~0.5σ)→頻繁に起こる
②中規模な変化(0.5σ~2σ)→たまに起こる
③大規模な変化(2σ~)→滅多に起こらない
よく「100万人に1人の美女」とか「100年に1度の大災害」といったフレーズで事象の珍しさを表すことがありますが、それは変化の大きさが中央からどれだけ離れているかで、確率を計算しているのだと思われます。
(ただの誇張表現で、根拠のない場合もありますが)
我々人間はこのような正規分布と確率の関係が染みついているので、平均から極端に外れた事象はまず発生しないものと認識しています。
もちろん、相場においてもそれは同様で、大きな変動より小さな変動の方がよく発生することを理解しています。
この変動幅と確率が相関を持つ法則は、市場においても概ね成り立ちます。
1時間後のドル円の為替レート変化とそれが起こる確率を表すと、次のようになるでしょう。
①10pips上下する→確率が高い
②100pips上下する→確率は低い
③1000pips上下する→確率は極端に低い
これはFXトレーダーなら納得のできる話。
1時間後なら、今の為替レートとたいして変わらない確率の方が高い。
1000pipsも動いていたら、大事件です。
しかし、上記の三つが成り立つからといって、マーケットが正規分布であるというわけではありません。
もしも為替変動が綺麗な正規分布を描いていたら、相場は完全に合理的で、何の歪みもないことになります。
プロフィットファクターと確率が綺麗に逆相関になり、どの利益幅を狙っても期待値が変わらなくなります。
その場合優位性も存在しないため、儲けることも一方的に負けることもできなくなるでしょう。
しかし、本当の相場はフラクタルで、完璧な線形からは程遠い。
だからこそ、それぞれの戦略に優位性が生じ、勝ち組と負け組が生まれます。
過去の無数のデータから統計を取ると、以下のようなズレが確認できます。
①小規模な変化(0~0.5σ)が正規分布以上に頻繁に起こる
②中規模な変化(0.5σ~2σ)が正規分布以下しか起こらない
③大規模な変化(2σ~)がが正規分布以上に発生し、特に極端な変動が発生しやすい

小さなレート変動は元々多いのですが、実際の相場では正規分布の理論値以上に出現頻度が高くなります。
為替相場の8割がレンジ相場で、抜けそうになってもダマシで戻ってしまうのにも符号しますね。
小さな上下を繰り返すことが多いため、小刻みに利益を狙うトレード(スキャルピングやトラリピ)に優位性があります。
一方で、中規模のレート変動は理論値よりも小さい。
そのため200pips~500pipsぐらいのそれなりの値幅は、取れる機会が少なくなります。
特に初心者トレーダーは中程度の利益を取りたがるので、それが裏目に出ることがあります。
10%以上の大きなレート変動は正規分布の確率ではほぼあり得ないはずですが、現実では意外と多く目にします。
しかも、その変動量が想像以上に大きくなる傾向があります。
線形思想から抜け出せない低レベルなアナリストにとってリーマンショックは「100年に一度の危機」だそうですが、そんなことはありません。
ブラックマンデーやリーマンなどの例を見れば、大暴落や大暴騰が確率以上に頻発しているのは明らかです。

大相場においては、トレンドフォローやブレイクアウト手法が優位性を持ちます。
リミットを置かない、あるいはトレイリングストップによって利確幅を固定しないことで、膨大な利益を得ることができます。
確率は低いものの、大変動を捉えた時の損益は非常に大きい。
何百回もトラリピを繰り返してコツコツ稼いだ利益が、一度のトレンドで消滅することもあります。
以上のことから、FXトレーダーが相場で稼ぐためには、
①高い勝率で、小さな値動き取る
②低い勝率でも、大きな値動きを取る
のいずれかを選ぶことになります。
中規模の利益をそれなりの確率で取るトレード手法もあるでしょうが、上記の分布においては優位性がないため、他の要因で優位性を確保する必要があります。
さて、貴方はどちらの道を選んだでしょうか?
コツコツドカンを恐れながらも、平坦な所で細かい利益を取りにいくのか?
損切り貧乏になりながらも、ここぞという所で一年分の利益を取りに行くのか?
それとも統計を無視して、その場の値動きを追っていくだけでしょうか?

⇒ランダムウォーク理論が間違っている理由
⇒ボリンジャーバンドで逆張りしたらFXに勝てるのか
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