イタリアのミニBOT債とアベノミクス金融緩和は借金の踏み倒しに他ならない

物事には光と影がある。片側だけを見ていてはいけない。
イタリアではポピュリズム政党が連立し、新政権が樹立されるようです。
税金や社会保障制度など、大きな改革が行われる模様。
ギリシャと並ぶヨーロッパの債務国が税制を変えて、財政は大丈夫なのか?
と思ったら、「mini-BOT」という短期政府債を発行して政府債務を支払うつもりのようです。
「ECBに32兆円の債務免除を要請する」という話もありましたが、そちらは実現可能性が低い模様。
この「mini-BOT」は国債でありながら、利息はゼロ。
また、償還期限もありません。
利息も期限もなく、国が保証する価値交換媒体。
これはもはや債券ではありません。
私達が普段使っている通貨と同じものですね。
(そもそも経済学的にキャッシュとクレジットはほぼ同一なのだが)
要するに、イタリアは政府紙幣を発行し、財政の危機を乗り切ろうとしているのです。
日本のように独自の通貨を持っているならともかく、欧州連合(ユーロ)に加入したまま勝手にお金を刷ってよいのでしょうか?
一般人としては、
「お金が足りないなら印刷すればいいじゃん」
というのはわりと納得してしまいそうな意見ですが、実際にジャンジャン輪転機を回したら経済はどうなるのでしょうか?
イタリアの事情はわかりにくいので、仮に日本政府が1000兆円硬貨を発行して国債を全部償還した場合を考えてみましょう。
(実際にできるかはともかく)
放漫財政で日々増加していく日本の借金を、一気に返済できたら素敵ですね。

国債と同額のお金を無から作り出したら、借金がなくなってみんなハッピー?
残念ながら、そうはなりません。
日本国債の4割は日銀が持っていますが、残りの600兆円は一般の銀行や個人向け国債を買っている投資家のものです。
借金を全額返済したら、彼等には600兆円の余裕資金が残ります。
タンス預金にしておくわけにもいかないので、彼等はその資金の運用先を必死で探すことになります。
お金が余って余って仕方ない銀行は、顧客の預金を必要としなくなります。
なので、銀行預金の利息は低下します。
場合によってはマイナス金利を適用したり、口座手数料の徴収を行う可能性もあります。
浮いたお金は株式市場、為替市場、商品先物市場、不動産市場に流れ込みます。
海外の多少リスクのある銘柄でも、利回りさえ良ければどんどん投資されるでしょう。
当然株価は大暴騰。
海外投資で為替レートは大きく円安に。
ゴールドなどの貴金属や食品は値上がり。
都内のマンションの価格も上がります。
あれ、なんかデジャブ?
これと全く同じことが、過去にもあった気がします。
勘の良い方はもうお気づきかもしれません。
過去にアベノミクスで起きたことと、全く同じですね。

異次元緩和とは、国債を日銀が買い取ることで市場に大量のマネーを供給する政策。
政府紙幣の発行は、政府の借金を新規紙幣で支払う代わりにマネーサプライを増やしてしまう政策。
どちらを選んだとしても政府債務は軽減し、市場には過剰な資金が溢れます。
要するに、アベノミクスは日本の借金を踏み倒す政策なんですよ。
日銀は本来日本政府から独立した組織ですが、既に中立性は失われ、政府の一機関になり果てています。
国債を直接引き受けないことで形の上では法律を守っていますが、4割も買い取っておいて引き受けをしていないとはとても言えません。
国債の買い入れは借金を帳消しにはしていませんが、利息は国庫に返還されるので、実質消滅しているようなもの。
この先無利子債に置き換えるなり、国家が発行した紙幣で償還するなりすれば、完全に徳政令になってしまいます。

ギリシャやアルゼンチンのデフォルトと違うのは、金融緩和という名目であること。
そして毎月少しずつ借金を踏み倒すことで、社会に与える影響を分散していることです。
日銀の国債買い入れ額は、年間80兆円。
毎年80兆円ずつ借金を踏み倒せば、13年ぐらいでチャラになる計算です。
別にゼロにする必要もありませんが。
市場に資金が溢れれば、当然円安インフレが起こって物価は上がります。
預金金利はゼロになって、国民の資産は目減りします。
新たに創出した1000兆円分の負担は、確実に国民に転嫁されるわけです。
でも、大丈夫。
日本国民は、金融緩和を借金の踏み倒しだとは思っていないから。
株価が上がれば、好景気。
円安になれば、好景気。
物価が上がれば、好景気。
マネーサプライが増えるのいいこと。
そう思い込んでいるから、喜んでアベノミクスを推進できるんです。
たとえ実際には全く経済成長せず、エンゲル係数が上がって生活が苦しくなったとしても。

アベノミクスのおかげで、日本の借金は大きく目減りしました。
イタリアの政府紙幣も、実現すれば(EU各国はともかく)自国の財政負担は軽減されることでしょう。
返済しきれないほどの膨大な借金を抱えた国としては、最善の策と言えるかもしれません。
しかし、それはタダではありません。
政府のバラマキによって最も大きな負担を被る国民が、真実を知らぬままでいいのでしょうか?
自国内で完結している日本はまだしも、ユーロ安という形で被害を受けるEU諸国がそれをみすみす見逃すとは思えません。

⇒アベノミクスは失敗していない むしろ大成功
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