「貯蓄から投資へ」なんてデタラメな言葉に騙されるな!
2018-11-17|負ける理由(真実を知りたい貴方へ)

よくわからんけどなんか納得してしまう!?
「貯蓄から投資へ」
これは2001年に小泉内閣の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針概要」で掲げられたスローガン。「低金利の銀行預金を止めて利回りの高い株を買いやがれ」という日本政府からの有難いお言葉です。
この方針やアベノミクス金融緩和を通じて盛んに投資を煽った結果、日本人の金融資産構成は大きく変化しました。
<1999年>
現金・預金 ・・・・・54.0%
債券・・・・・・・・・5.3%
投資信託・・・・・・・2.3%
株式・・・・・・・・・8.1%
その他・・・・・・・・3.9%
<2017年>
現金・預金 ・・・・・51.1%
債券・・・・・・・・・1.3%
投資信託・・・・・・・5.8%
株式・・・・・・・・・11.2%
保険・年金 ・・・・・27.7%
その他・・・・・・・・2.9%
全然変わってなくね?

これだけ投資を煽ったというのに、半分以上は預金や現金のまま。
株や投資信託の増加もごくわずか。
こんなパフォーマンスに騙されるほど、日本人は馬鹿じゃなかったってことかな?
そもそもこの「貯蓄から投資へ」というフレーズは、根本的におかしい。
まともな知識のある経済人なら、言葉の意味が整合していないことにすぐ気付くはず。
貯蓄とは、収入のうち消費に使わず、手元に残すお金のこと。
証券や債券に投資しなかったお金のことではありません。
つまり、「お金を死蔵させるのは止めて経済を回しなさい」と言いたいのであれば、
「貯蓄から消費へ」または「貯蓄から浪費へ」が正しい。
投資とは、利益を得る目的で事業などに資金を出すこと。
株式や債券、不動産はもちろん、銀行預金も投資先の一つです。
「銀行預金は止めて、株式を買いなさい」と言う意味であれば、
「預金から証券へ」というスローガンが相応しい。
貯蓄と投資は全く次元が違う言葉であり、対義語でもなければ同列に置く言葉でもありません。
広義の投資には金融商品(銀行預金)も含まれているため、変化にすらなっていません。
このフレーズを作った人は、投資というものを全く理解していないんじゃなかろうか?
日本語の意味を理解していないあたり、日本人でもないかもしれない。

言葉の意味を追求しても揚げ足取りになるだけのでこのへんにしておきますが、結局この政策に効果があったかというと、全く意味はなかったと思います。
先ほどのデータのように、現金・預金と証券の比率は3%ぐらいしか変わっていません。
また、仮に預金から証券や投資信託に大量のお金が流れ込んだとしても、日本経済には大きな影響が出るとは考えられません。
例えば貴方が普通預金や定期預金から100万円を引き出して、そのお金でトヨタ株を買ったとしましょう。
それは日本の製造業を支援することになるでしょうか?
おそらくならないと思います。
ゼロ金利政策によりタンス預金も増えましたが、日本人の金融資産の大半は銀行の預金です。
預金はただ死蔵されているのではなく、銀行がレバレッジをかけて企業への融資に使っています。
企業は間接的に日本国民の預金を借り入れて、事業を行っているわけです。
もちろん、株式や社債も資金調達の方法の一つです。
株や債券を新規公開することで、企業は直接投資家からお金を集めることができます。
しかし、既に市場にある株や社債を転売したところで、会社の懐に資金が入ることはありません。
投資家同士の間でお金がグルグル回るだけです。
企業の資金需要を満たしたいのであれば、わざわざ株式や投資信託の比率を増やす必要はありません。
むしろ融資が減り、マネーサプライが減少する可能性すらあります。
それ以前に日銀がゼロ金利や膨大なETF買いをしているのだから、中小企業はともかく大企業の需要は過剰なくらい満たされているでしょう。
「預金から証券へ」を忠実に実行したところで、日本経済が活発化することなんてあり得ません。
株価が必要以上に上がって、既存の株主が得をするだけですね。

もしも景気回復を目指すのであれば、先ほど示したように「貯蓄から消費へ」へのスローガンが必要です。
利殖のためのマネーゲームではなく実需に資金を回すのであれば、GDPも上昇してデフレも解消されるでしょう。
もちろんそのためには富裕層や高齢者ではなく、消費意欲が旺盛な若者にお金が回るような仕組み作りが必要ですが。
銀行預金も証券も債権も、金融商品の一種に過ぎません。
一切株を買わずに銀行にお金を預けているだけでも貴方は投資を行っています。
もちろん、それらの投資はリスクの大きさが異なりますが。
普通の銀行預金は、元本が保証されてペイオフがある代わりに金利が低い。
株式は、価格が変動する代わりに利回りが高い。
外貨預金は、ペイオフがなく為替リスクがある代わりに金利が高い。
投資はどれも一長一短があって、どの投資が一番良いということはありません。
政府に勧められて行うものでもありません。
貴方が自分の投資スタイルに合わせて、一番合ったものを選択するだけです。

⇒株とFXの比較 どっちが儲かる?