現代貨幣理論(MMT)で日本政府は財政破綻しない?→んなこたーない

いくら増えても大丈夫?
<講義予定>
①現代貨幣理論(MMT)とは
②現代貨幣理論(MMT)で日本国債は破綻しない?→今回の話
③現代貨幣理論(MMT)の致命的な間違い
前回の記事で、MMTを用いれば通貨発行益を利用した財政運営が可能になるということを話しました。
もちろん国債を発行して財政投資をすれば市中に回るお金がインフレを招きますが、異次元緩和でもさしてインフレが進まない今の状態なら緩和余地はあるかもしれません。
例えば、1100兆円の国債を段階的に2000兆円に拡大しても過度のインフレ懸念がないのであれば、900兆円を社会保障に使うことができます。
それで消費税を廃止して景気回復が実現できるなら、そういった政策もありかもしれません。
しかし、本当に何千兆円という国債を積み上げても財政は破綻しないのでしょうか?
いくら政府が自国通貨を発行できるといっても、それでデフォルトが回避できると言いきれるのでしょうか?
そこで、日本が財政破綻する懸念について考えてみたいと思います。
日本経済が破綻する理由
・利払いによる破綻
・日銀のロスカットによる破綻
・外貨建て債務による破綻
・利払いによる破綻
国債は借金なので、当然貸し手に対して利息を支払わなければなりません。
利率は時期によって変動しますが、仮に1%が平均だとしましょう。
1100兆円で支払う利息は、11兆円/年。
何もしなくても債務があるだけで、11兆円を支払わなければなりません。
2000兆円なら、20兆円。
1京円なら、100兆円。
1%という低い金利であっても、国家予算をたやすく圧迫します。
その支払いも国債の新規発行で賄っていけば、あっという間に借金が積み上がって破綻するでしょう。
実際2018年の米国は、償還と利払いが50兆円を超えています。
10万円のカードローンを延滞したために、数百万円に膨れ上がって破産。
そんなどこかの主婦のような話が日本政府で起きるかもしれません。
ドーマー条件(経済成長率が政府債務の金利を上回っていれば債務の対GDP比が発散しない)という説もありますが、成長率が金利を上回り続ける保証はありません。
仮にMMTで経済成長しても、成長が鈍化した後に多額の債務が残れば借金で首が回らなくなります。
利払いによる破綻を避けるためには、金利を完全にゼロにするか、日銀に全て買い取らせる必要があります。

金利をゼロにするのは、引き受け手がいないため無理でしょう。
利率ゼロまたはマイナスの国債は実際に発行されていますが、長期保有目的でそれを買うバカはいません。
民間銀行がマイナス国債を買っているのは、日銀が買値以上の値段で買い取ってくれる確証があるからです。
個人向け国債のようにプラスの金利保証をしなければ、金融商品としてはとても成り立ちません。
いっそ市場に売るのを諦めて日銀が全ての国債を買い取れば、金利負担は考えなくてよくなります。
日本政府と日銀はどちらも同じ公共機関なので、プラスマイナスを連結して相殺できるからです。
しかし、その場合日銀は政府と完全に癒着し、独立性は失われてしまいます。
(アベノミクスで既に独立もクソもない気がするが)
財政法第5条に定められた「国債の市中消化の原則」にも反します。
法律を改正して日銀が全国債を引き受ければ、国債市場は完全に消滅します。
その結果、金融市場がどうなるかはわかりませんが、利息収入に頼った銀行は絶滅するような気がします。
国債ではなく、利子の付かない政府紙幣を発行する手もあります。
その場合も形は変わりますが、本質的には無利子国債を発行しているのとあまり変わらないと思います。
・日銀のロスカットによる破綻
一般の投資家とは規模が違いますが、日銀や年金(GPIF)は投資家の一種ではあります。
日本国債、株式、ETFといった金融資産を多数保有しているからです。
金融危機が起こって株価や為替が下落すると、一般の投資家はロスカットで対応します。
レバレッジをかけた信用買いであれば借金を背負う可能性があるし、現物であっても全損に近い状態になる場合もあります。
日銀や年金は簡単には損切りしませんが、評価損益の仕組みは同じです。
購入したETFが大きく値下がりすれば資産評価額は下がり、最悪債務超過に陥る可能性もあります。
日本国債だけであれば日銀がコントロールできる可能性もありますが、全世界が関わる株価を完全に買い支えるのは不可能です。
もしも急激な下落が起これば、債務超過になった日銀はその金融資産を全て手放さなければなりません。
そうなれば何百兆円ぐらいの売り注文が一気に出るため、日本国債はおろか世界中の株価が大暴落するでしょう。
日本版リーマンショックと呼ばれるかもしれません。

・外貨建て債務による破綻
これは実際にあるかわからないのですが、日本にも外貨建ての債務が存在する可能性があります。
MMTは「自国通貨建ての債務なら破綻しない」という論理なので、米ドルなど外貨の債務があったら前提が崩れます。
大半の人はご存じないでしょうが、戦後の日本は世界銀行や米国から融資を受けて復興してきました。
例えば高度経済成長を支えた新幹線は、世界銀行の支援を受けて作られました。
当然それらはUSD建ての債務だったのですが、特別会計(公表されない会計)だったので殆ど知られていません。
現在の日本にも特別会計が存在し、一般会計の何倍もの予算が動いていると言われています。
公表されている数倍の債務が存在しても全然不思議ではないし、それらが全て日本円建てである確証もありません。
外貨負債や金銭以外でも海外の借地などがあれば、日本の債務だけ考慮するわけにはいきません。
そうでなくてもODAや国連負担金、米軍の思いやり予算など、海外に支払わなければならないお金もあります。
MMTで日本円の価値を毀損した後に、国際的責任を果たすことができるのでしょうか?
また、日本は食料自給率が低く、資源も輸入に頼った国です。
円を大量に発行すれば円安になり、輸入物価は上昇します。
実際にアベノミクスで為替レートは80円→120円になりました。
MMTで円の信用が落ちれば、海外から食料や資源を輸入するのは難しくなります。
仮に国内への供給が完全に途絶えれば、ハイパーインフレまっしぐら。
ジンバブエやベネズエラを笑えませんね。

上記は思いついた懸念事項を並べてみただけなので正確ではないし、他にも破綻リスクはあると思います。
理論上中央銀行は自国通貨を無限に発行することができますが、だからといって「いくら借金をしても大丈夫」ということにはならない。
デフレ下で緊縮財政を進めてさらに景気を後退させるのは避けるべきですが、債務に頼った財政出動にも限界があると考えておくべきです。
さらに言うと、MMTの問題は財政破綻だけではありません。
むしろそれより致命的欠陥があります。
猫賢者が本当に伝えたいことはそこにあるので、次回の更新も宜しくお願いします。

⇒現代貨幣理論(MMT)の致命的な間違い