アリとキリギリスが逆転する現代社会

ブラック企業にもほどがある。
世の中堅実が一番です。
真面目にコツコツ働くのが美徳であり、楽して儲けようなんて愚の極みです。
誰もが小学生の頃読んだイソップ童話にも、そんな教訓がありました。
そうそう、たしかこんな話でした。
<アリとキリギリス 現代版>
夏のある日、キリギリスが路上ライブをしていると、アリ(社畜)たちがぞろぞろ歩いてきました。
「おい、アリくんたち。どこへ行くんだい?」
「これはキリギリスさん、私達は今月の給料を貯金するために銀行に向かっているんですよ」
「ふーん、せっかく給料が出たなら、パーと使えばいいじゃない」
「でもね。キリギリスさん。
今は会社に勤めていからお金がたくさんあるけど、定年になったら収入はなくなってしまいますよ。
今のうちにたくさんのお金を貯めておかないと、あとで困りますよ」
アリたちがそう言うと、キリギリスはバカにした様に、
「ハハハハハハッ」
と、笑って。
「まだ早いよ。老後の事は後から考えればいいのさ」
そう答えると、また歌を歌い始めました。
さて、それからも毎日キリギリスはバンド活動を続け、アリたちはせっせと貯蓄に励みました。
やがて好景気が終わり、不景気が来ました。
会社のために賢明に働いていたアリは、人員整理の為に解雇されることになりました。
十分にあると思っていた貯蓄は、インフレにより予想以上に減っていました。
さらに政府が金融破綻を起こし、預金封鎖により一日60ユーロしか引き出せなくなりました。
再就職しようとハローワーク向かっても、ECBに義務付けられた緊縮策により、なかなか新しい仕事は見つかりません。
貧困に陥ったアリは、
「ギリシャだったのかよ!」
と叫びました。
一方、路上バンドに勤しんでいたキリギリスはプロデュサーにスカウトされ、ソロデビューすることになりました。
狭いギリシャを飛び出し、世界を股にかけるスーパースターとなり、印税で暮らすようになりました。
めでたしめでたし。
うろ覚えなので詳細はあやふやですが、だいたいの流れは合っていると思います。
確か原作ではキリギリス⇒セミでしたが、たいした違いはあるまい。
いくらでも変わりのいる仕事に埋没した社畜は会社の都合で解雇され、社会の変化によって貯蓄さえ奪われる。
自身の夢を追い求めた若者は大成し、より広いステージで活躍し、金銭に囚われない生活を送る。
まさに社会の縮図。
子供に対する最高の道徳教育ですね。
イソップさんすげぇ。
この話を聞いて間違っていると思う人もいるでしょうが、実際にこのような現象は世界中で起きています。
少なくともギリシャでは、アリと同じような境遇の人が沢山いるはず。
機械技術の急速な発達と生産性の向上により、代替が可能な仕事に対する対価は著しく低下しました。
大抵の仕事がアウトソーシングで賄えるようになったことで、新卒で正社員を雇い入れて育てるシステムは、殆ど崩壊しかけています。
雇用関連の法律の改正により、現在の正社員ですらいつまでその地位を維持できるか怪しくなってきています。
誰でもできる仕事を忠実にこなす時代は、既に終わりました。
これから先は、本人の希望に関わらず、誰もが自分でビジネスを立ち上げなければ生き残れない時代です。
「アリをやめてキリギリスになるべき」
というわけではなく、社会によってキリギリスであることを強制される時代なのです。
イソップ童話の教訓から、人生の舵取りを学んでいきましょう。

子供とはいえ、侮るなかれ。
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