分散投資は暴落相場に有効?
2015-09-21|FXのカラクリ(初心者向け)

財産がなければ、恐れるものもないか・・・
古くから相場には、
「卵は1つのカゴに盛るな」
という格言があり、一つの銘柄に全資金を投入するのは悪手とされています。
それもそのはず。
資金を全部一つの株式に替えていたとしたら、有事の際に全ての資金を失うことになりますから。
ソフトバンク株に資産を集中すれば、ソフトバンクと運命を共にすることになります。
トルコリラに資産を集中すれば、トルコと運命を共にすることになります。
会社の上場廃止や国家情勢といった個別のリスクに対応するために、資産は分散するべきだと言えます。
株式にせよ外貨にせよ、複数の銘柄に分けるか、日経225やインデックスファンドなどの総合銘柄で運用するほうが好ましいでしょう。
しかし、それはあくまで「各銘柄特有のリスクに備えるため」であって、本当の意味でのリスクヘッジとは言えません。
リーマンショックやブラックマンデーのような暴落相場においてそれを実行しても、何の意味もないことを覚えておいてください。
かのリーマンショックでは、日本円を除くほぼ全ての銘柄の価格が急降下しました。
・ほぼ全ての株式
・大半の外貨
・土地や建物
・プラチナなどの貴金属
・原油などの商品
正確に言えばわずかに上がった株もありますが、大半の銘柄が一方的な下落を起こし、多くの投資家が損切りを余儀なくされました。
株、外貨、土地などに分散していたとしても、何の意味もなかったわけです。
なぜ分散投資の意味がなかったかというと、
「相場には全体の流れというものがあるから」
という理由もありますが、
「分散したつもりで、全く分散されていなかったから」
というのが主因だと思います。
まず前者は、株式相場全体の傾向ですね。
各銘柄はそれぞれバラバラに動いているように見えますが、実は様々なグループごとに連動しています。
例えば自動車業界が堅調なら、トヨタもホンダもスズキも、いずれも株高になりやすいでしょう。
あるいは日本株全体、中国株全体といった大きなカテゴリで上昇・下降することもあるかもしれません。
それなのに同じグループで資金を分散したって、たいした意味はないでしょう。
後者はもっと重要で、多くの投資家が見逃している問題です。
株式・外貨・土地・貴金属などにいくら分散しても、分散しているように見えるだけで、実際は分散されていません
なぜかというと、そのほとんどが円建てであり、同じ資産をベースにしているからです。
FXをやっている人はわかると思いますが、取引というのは「何かを売って、その分だけ何かを買う」行為です。
例えば、それぞれの銘柄は、USD/JPY(円を売って米ドルを買う)といった風に表されます。
カントリーリスクを避けるために複数の外貨を買うとしても、
・USD/JPY 1枚ロング
・EUR/JPY 1枚ロング
・AUD/JPY 1枚ロング
・NZD/JPY 1枚ロング
・ZAR/JPY 10枚ロング
というようにポジションを取ったのでは、意味がありません。
日本以外の国のリスクには対応できるかもしれませんが、肝心の日本のリスクが直撃するからです。
リーマンショックで何が一番買われたのかと言うと、間違いなく日本円です。
(次が米ドルかな)
大量の資産(株式や外貨)が換金され、価格が地に落ちました。
要するに、暴落相場とは、
「現金の価格が上昇し、それ以外の価値が下がる相場」
だったわけです。
私達はいつも現金を基準にレートを見るから資産価値が急降下しているように見えるだけで、実際は現金の需要が急騰していたのですよ。
日本円が必要な時に日本円のショートポジションを取っていたら、間違いなく破産します。
それは外貨のロングでも同じだし、株式や土地であっても同じことです。
特に恐ろしいのは、
「FXトレーダー以外の投資家は、自分が日本円を取引していることを知らない」
ということ。
自覚がないから多数の株式を買うことで、分散投資をしたような気分になってしまうのです。
日本人かソフトバンク株、ドコモ株、KDDI株を買ったとしたら、それぞれの表記は、
・ソフトバンク/JPY
・ドコモ/JPY
・KDDI/JPY
になります。
これはあまりにもバランスが悪い。
FXトレーダーが、
「豪ドルだけ買うとバランスが悪いから、キウイも一緒に買うよ(*’U`*)。」
と言っているのと同じです。
もしも暴落相場に備えてヘッジをかけるなら、分子と分母の両方を分けて、上手くバランスを取らなければなりません。
具体的には、
①買いと売りを同数に近づけて、日本円変動の影響を抑える
・ドコモを現物で買って、ソフトバンクを空売りする
・AUD/JPYを買って、NZD/JPYを売る
(最初からクロスを買ったほうが資金効率が高いけど)
②分母(ベース)を含めて分散する
・ドル建ての金を売り、円建ての株を買う
・EUR/USDとAUD/NZDを買う
といった感じになるでしょう。
例はかなり適当なので、実際に何を買うかは各人の判断によりますが。
また、「リスク資産(株や新興国通貨)」と「リスクオフ資産(日本円や米ドル)」に分けて、バランスを取ることも必要です。
株や金を買っているだけだと忘れがちですが、何かを買う時は、必ず何かを売っています。
日本円売りに集中すると、暴落相場で現金需要が高まった時に、境地に陥るわけです。
分子だけの分散ではなく、本当の意味での分散投資を心掛けましょう。

分別は間違えないようにね♪
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